前立腺シンポジウム

第27回前立腺シンポジウム(2011年)

第27回前立腺シンポジウム

第27回前立腺シンポジウムは、第1日目の10日(土)に「基礎部門」として指定演題の発表と教育セミナー1を行い、第2日目の11日(日)には「臨床部門」として教育セミナー2および「リスク別治療法における放射線治療の役割」をテーマに、パネルディスカッション、公募による口演とポスター発表・討論を行いました。

第1日目の「基礎部門」では、前立腺がんに関連する基礎研究の指定演題9題と、当財団の研究助成受賞演題3題の発表がありました。前立腺がんの微小環境調節因子としてのmiRNAの役割、発がんに関係する可能性のある遺伝子や増殖因子、アンドロゲン機能解析、1次予防の可能性などについて、最先端の基礎研究の発表があり、活発に討論が行われました。また、教育セミナー1では、横浜市立大学医学群微生物学の梁 明秀先生から「ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1:前立腺癌の形成や維持に関与する新しいリン酸化後修飾因子」についてご講演いただきました。最新の知見についてわかりやすくお話しいただき、その後、活発な意見交換が行われました。

第2日目の「臨床部門」では、教育セミナー2において、ニューヨークのマウント・サイナイ病院のネルソン・ストーン教授より、早期から局所進行前立腺がんに対する最善の治療戦略としての密封小線源永久挿入療法(ブラキセラピー)の重要性に関するご講演があり、近年のブラキセラピーの進歩について、非常に示唆に富む、教育的な講演がありました。我が国における放射線腫瘍医はまだ不足しており、最新の放射線治療装置の導入も十分ではない現状から、実臨床でブラキセラピーの治療効果を実感できる泌尿器科医はごく限られています。今回の教育講演により、我が国が進むべき前立腺がんに対する治療の重要な方向性の一つが明確になる、非常に貴重なお話を聞くことができました。また、今回の臨床部門の主テーマは「前立腺がん放射線治療の適応と限界―小線源治療から重粒子線治療まで―」であり、日常診療において、患者側のニーズが高く、また実診療数が年々増加している、前立腺がんの放射線治療のマネージメントについて集中的に発表と討論を行う、極めて貴重なシンポジウムでありました。パネルディスカッションは「リスク別治療法における放射線治療の役割」と題し、治療経験が豊富な泌尿器科医、放射線腫瘍医から指名されたパネリスト5人により、前立腺がんのリスク分類の概要、低~中リスク限局がんに対する放射線治療のテーラーメイド治療戦略、重粒子線治療の役割など、非常に重要な臨床課題について講演と討論が行われました。また、一般演題においては、全国から、多くの専門医療機関より、さまざまな前立腺がんの放射線治療に関する演題を中心に42演題の発表がありました。

2日間にわたって開催された今シンポジウムには、382名の方々にご参加いただきました。全国の泌尿器科臨床医と放射線腫瘍医を中心に、前立腺がん治療に関わっている関連診療科の医師が一同に会し、討論を通じて意見交換ができたことは、明日からの診療レベル向上に直結すると考えられ、極めて重要なシンポジウムとなりました。



テーマ 【臨床部門】「 前立腺がん放射線治療の適応と限界―小線源治療から重粒子線治療まで―」
日程 第1日目【基礎部門】:2011年12月10日(土) 12:55~18:00
第2日目【臨床部門】:2011年12月11日(日)  8:55~15:50
場所 東京コンファレンスセンター・品川 (東京都港区港南1-9-36)
次第 第1日目:【基礎部門】
①指定演題(口演)
1 「miRNA 解析」
2 「発癌と増殖1」
3 「発癌と増殖2」
4 「アンドロゲン機能解析」
5 「治療と予防」

②教育セミナー 1
「ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1:前立腺癌の形成や維持に関与する新しいリン酸化後修飾因子」
梁 明秀 (横浜市立大学医学群微生物学)

第2日目:【臨床部門】テーマ 「前立腺がん放射線治療の適応と限界 ―小線源治療から重粒子線治療まで―」
①パネルディスカッション
「リスク別治療法における放射線治療の役割」
■司会
齊藤 泰(佐世保市立総合病院名誉院長)
唐澤 克之(都立駒込病院)
■パネリスト
伊藤 一人(群馬大学大学院)
斉藤 史郎(国立病院機構東京医療センター)
三木 健太(東京慈恵会医科大学)
秋元 哲夫(国立がん研究センター東病院)
赤倉功一郎(東京厚生年金病院)

②公募演題
口演セッション
1 「根治療法:125-I・HDR brachytherapy」
2 「根治療法:3D-CRT・IMRT」
3 「救済放射線療法・合併症・2次発癌リスク」

ポスター討論
1 「ポスター討論①」
2 「ポスター討論②」

③教育セミナー 2
「The Optimal Treatment for Early to Locally Advanced Prostate Cancer」
Nelson N. Stone, MD.
Clinical Professor of Urology and Radiation Oncology, Mount Sinai School of Medicine, New York, NY, USA

臨床部門のテーマ設定の背景

今回のシンポジウムでは、前立腺がん治療のなかでも、日常診療において、患者側からのニーズが増加傾向にあり、実際に至適治療戦略を構築するにあたり、極めて重要な位置づけにあり、さらに前立腺がん診療に当たる医師は、常に最新の深い知識の更新が要求される放射線治療を主題にしました。
日本の前立腺がんの放射線治療に関わっている泌尿器科臨床医と放射線腫瘍医を中心に、関連診療科の医師が、じっくり討論する機会を設けることは、日本の前立腺がんに対する治療レベル向上に欠かせず、今後の我が国が進むべき方向性を決定する事にもつながり、臨床の場における貢献度は極めて大きいと考え、テーマを設定しました。

当日の様子


「基礎部門」開会の挨拶
小西登基礎部門代表運営委員

「基礎部門」セッション
会場の様子

「基礎部門」教育セミナー1
演者:梁 明秀教授

「臨床部門」開会の挨拶
塚本泰司運営委員長

「臨床部門」教育セミナー2
演者:ネルソン・ストーン教授

「臨床部門」パネルディスカッション
会場の様子

「臨床部門」口演セッション
会場の様子

「臨床部門」ポスターセッション
会場の様子[第1会場]

「臨床部門」ポスターセッション
会場の様子[第2会場]

「臨床部門」閉会の挨拶
村井 勝財団学術担当理事

会場の様子
受付風景

会場の様子
情報コーナー